インタビューするコツ・されるコツ
これまで出してきた著書の関係でいくつかインタビューを受けてきました。数は少ないんですが、ここでまとめておきます。
【多根清史氏インタビュー 前編】日本の産業や文化に巨大なインパクトを与えたゲーム機たち
『商工にっぽん』2009年1月号 「これからのニッポン」(目次のみ)
ふだんはインタビュー“する”側にいて、“される”側に回ったらどうしようかとドギマギしていたんですが、インタビュアーの方々が上手くて助かりました。ていうか、自分よりインタビューが上手くて悔しい。やっぱりキャリアの違いって歴然としてるんですよね。
で、インタビューの「あちら側」と「こちら側」の立場を入れ替えてみたことで、実りのあるインタビューの前提がうっすら見えてきた気がします。
- 相手の著作をなるべく全て読んでおく
小説やアニメ、ゲームなど「読者の知りたいこと」についての最大の情報源であり、相手に対する最低限の礼儀であることはもちろんですが、何より「作者の考え方」が分かるのが大きい。どこから発想し、どういう視点を持ち、どんなものを組み合わせて新たな創造をしたのか。
そうやって、先にバーチャル対談ができるんですよね。相手を目の前にしてはとても言えない突っ込みを、本やビデオに対してはバンバン入れられる。実際のインタビューは、そのウラを取る確認作業にすぎない……と思ったら、そこからひっくり返されることもスリリングなわけです。
- 質問したいことや重要な情報をノートに書いておき、見ながら話を聞く
こちらがインタビューする側のときは、メモ書きをちらちら見るのは自信がなさそう、と思ってひかえていた。でも、インタビューされる側にいると、意外と不快じゃない。それどころか、マジメに聞こうとする姿勢がひしひしと伝わってきて好感度アップ!という。
- 【生き方】ではなく【作品】のことを尋ねる
「なぜ脱サラして作家になったんですか?」とか、生き方を聞かれる質問は非常に重たいです。だいたい創作してる人は、ものつくり>自分の人生ですから、置き去りにしてきたものを聞かれてもと。
それに、インタビューを受ける後ろには、「作ったモノを売りたい」という動機が必ずある。そこをそらすと、何のために時間を割いてるのか分からなくなり、ヘタをすると「バカにしてんのか!?」と怒らせてしまいかねない。
もっとも、「その人」の「生きざま」を聞きたいインタビューもあり、全てがこのかぎりではありませんが、よっぽど技量に自信がないかぎり上手くいかないんじゃないでしょうか。
面白いインタビューって、インタビューする側とされる側のコラボレーションじゃないかなーと。よくインタビューの前に質問リストを求められることもありますが、それはインタビューされる側が非常に協力的な場合だと思います。
質問リストは、話を聞く側にマジメに考えさせると同時に、話を聞かれる側に記憶を掘り起こすきっかけを与える。人間は「あのときは、ああだった」という物事のつながり、エピソードで記憶してる部分が大きいわけで、芋づる式に思い出すときの「芋づる」を用意して置いた方が絶対にいい。特に仕事がよくできて忙しい人ほど、過去の記憶はゴミ箱に捨ててることが多いですから、「芋づる」はインタビュアーにとって命綱なんですよね。
かっこいいマスクが売ってない
いいなーうらやましーなー(棒読み)。
どうせなら、とかっこいいマスクを探してるんですが、からっきし売ってないんですよね。
こういうマスクとかこういうマスク(メット?)でオシャレしたいじゃないですか。
ファッション用のマスクが店先に並んでいないのは、顔が見えないと職務質問をされやすいという防犯上の事情もあるかもしれませんが、やはり「日本の気候がマスクを必要としない」からなんでしょうね。もしも中近東の砂漠が多い国だったら、マスクにも飾り気があり、もっと商品性が生じていたかもしれない。
でも、「マスクを着用してるヒーロー」が舞台とするところは終末後の砂漠になった世界がほとんど。もともと砂漠の国だったら「非日常性」がないから、編集者やスポンサーが企画をボツにしやすいだろうと。その点、ガンダムのシャアのマスクだったら非日常性には不足ないんですが、インフルエンザは防げそうにないですよねえ。
「ゲーマーの楽園」という二分法について
このゲーム機はだめだ、メーカーがユーザーをなめている。それにひき替え、こちらのゲームメーカーはゲーマーを大事にしている。「ゲーマーの楽園」が築かれつつある−−と、ゲーム機とユーザーとを陣営に分けたりする。
こういうゲームの論じ方はけしからん? とんでもない、どんどんやればいいんじゃないでしょうか。
ゲーム機の売れ行きやシェアに、自分の生き方やアイデンティティを重ね合わせる。こういうデカいものとともに歩んでいく『坂の上の雲』気分を、たまたま早く生まれて“間に合った”ゲーマーは味わうことができた。こんな気持ちのいいこと、たまたま生まれるのが遅かったからって、楽しめないのは不公平じゃありませんか。一種のバーチャルプレイ、すでに終わったモノの追体験かもしれませんが、ゲームマスターする人がいてもいい。
それに、たとえアフリエイト付きでも1本は1本。この世に送り出されるゲームが増えることに違いはありませんし。
ただまぁ、「ゲームマニアかどうか」という二分法で、人類の半分をお客から切り捨てるのはもったいないんじゃない?と思いますけどね。
「買わされプレイ」を楽しめない?
お前の紹介した漫画がつまらなかったらどうするんだ問題。 - Something Orange
「お前の紹介した作品がおもしろくなかったぞ。どうしてくれる」という苦情がマンガレビューサイトに寄せられました、どうしましょ?というお話。
あー、僕の場合はお仕事柄、そうやって困った経験はほとんどないんですよねえ。
なんせ職業:クソゲーハンターでしたから。
ただ、「レビューサイトを見ること」と「商品を買うこと」を別々に分けて、後者がハズレだったから丸損した!って怒るのはおかしいんじゃないの?って違和感はある。
レビューを読んだときからワクワクは心の中にわき起こっている。頭の中に思い描いて、「この商品を注文する」ボタンを押そうかどうしようか、と買うたやめた音頭を(脳内で)踊る。んで、確実に楽しんだわけじゃないですか?ブツが届いて、ページをめくる瞬間までは。
僕の先輩だった(クソゲーハンター的に)ABCこと阿部広樹くんは「けなし代」を唱えていましたが、よく考えたらゲームメーカーにふんだくられた上に、ライターに代弁代?を払うわけで、それって二重払いじゃん!
で、ここでは「買わされプレイ代」を提案しておきたい。
本なりゲームなりのレビューというのは、文章の中だけで閉じていない。「読者が商品を買うこと」でようやく完結する。これって、縁日やお祭りで、みごとな口上で客寄せしてモノを売ってる香具師と同じですよね。ありとあらゆるレビュアーは、バナナのたたき売りをしてたフーテンの寅さんの弟子じゃないかなと。
寅さんからまともなものを買うより、「つかまされる」方がイキじゃないですか。
どうやって売ったらいいか頭を抱えるものを売ることは、知力やら胆力やら、持っているものを総動員しなきゃいけない。
その上で「買わされ」たら香具師=レビュアーの勝ち、笑って済ませるお客も勝ち。おたがいWin-Winでいいんじゃないかな〜と思うんですね。
まあゲームだの本だの、1万円もしない商品だから成立する幸せな関係で、それ以上だと“詐欺”になりかねませんけどネ。
良作iPhoneゲームの“見えざる手”
iPhone用の『バイオハザード ディジェネレーション』をクリアしました。いやあ、すんごく面白い! とても800円で売っていいソフトじゃありません。
「敵を倒すより、このドラマ的な所を楽しもうと思いました」とレビューされていたので、ついつい「操作性がよくなくてテンポが悪い?」と裏読みしてしまったんですが、実際にやってみると本当に「もっさり」の間を味わうゲームになっている。
カプコンの初?iPhone用ゲームなんですが、先行した国内メーカーのものを後追いしたというより、海外の『Brother in Arms』(これも700円で買えるのがウソのような傑作!)などを参考にしたみたいですね。
で、これまで何本かiPhone用のゲームをやり込んでみて、デキの良いものの共通点をいくつか考えてみました。
- ミニゲームよりも「ぜんぶ入り」
大作シリーズの外伝タイトルもぼちぼち目立ってきましたが、「千円以下だから」「iPhoneだから」ということでミニゲームにしちゃうと、あんまりいい印象を与えませんね。潜入捜査ゲームがモグラ叩きになったら、有り難がるよりもガッカリの方がデカい。
十字パッドもボタンもないから、元のままを再現するのは無理じゃないの? そこを逃げるかどうかで、人気と不人気が分かれるんじゃないでしょうか。
- ポリゴンが粗くてもいいんじゃね?
ゲームは遊べてナンボですから、「PS3並みのフルポリゴン、だけど動けない」のと「PS1程度のカクカクしたポリゴン、でも歩いたり視点を動かしたりできる」だったら、やっぱり後者を選びますよね。ものすごく止め絵がきれいなiPhoneゲームは、どうも地雷率が高い気がします。
- 操作のアバウトさと「見えざる手」
iPhoneのタッチ操作は、据え置き機や携帯ゲーム機のような厳密な操作は絶対に無理です。デフォルトの操作機器である「指」はタッチペンよりも太くて視界をさえぎる。傾きセンサーを使えば画面の半分は死角になるし、専用ゲーム機と同じシビアさは求められない。
だったら照準をぶっとく、銃弾も砲弾のようにでっかくして当たりやすくする−−という子供扱いをされて気持ちのいい人はいません。それよりは、照準を小さくしたままで、ターゲットにほんの少し近づける“見えざる手”でそーっとアシストしてやる。そうしてやることで、ユーザーのささやかなプライドを守ってるんじゃないかな。
だいたいにおいて、iPhoneのゲーム専用に作られたわけじゃないシステムと、ゲーム専用機ほどゲームをやる気に満ちあふれてるはずもないプレイヤーとの間にワンクッションを置くのがいいゲーム、といったところでしょうか。「貧弱なハードほどがんばりがいがある」という移植ゲームの伝統が受け継がれているようで、ほんのり温かい気持ちになりました(笑)
最近のお仕事(してない日記?)
PHPの文庫本に、『北斗の拳』のシンについて寄稿しております。
ユリアを奪った男→ジャギに唆されて血迷っただけ→命を張って愛した女を救った男、と武論尊チックなイベントドリブンというか、人格の変動相場制に翻ろうされたキャラを追っていくのはなかなか楽しかったです。
『日経エンタ!』のゲーム特集でごいっしょした大山くまおさんも参加されてたんですね。
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というか、3月末の原稿ラッシュの後にした連載以外の仕事というとこれぐらいで、どんどん積みゲーが消化されていくのが複雑な心持ちですねえ……。
また何か書きます(笑)
はてなに引っ越し&最近のお仕事(後編)
というわけでココログからはてなに引っ越しです。ニフティが有名人ブログ認定してくれないしな! エントリも前回の続きということで、告知しそびれていたお仕事をつらつらと。
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・【特集】咲-Saki-(JKと麻雀が出会うとき/小野監督インタビュー/GONZO5スタ取材)
・JK(女子高生)部活アニメの世界(生徒会アニメにつき)
・【特集】黒田洋介×倉田英之のチカラと魅力(スタジオオルフェとは?の総括)
・【特集】ソウルイーター&ボンズ(ソウルイーターの原作とアニメの比較/『亡念のザムド』レビュー)
・戦場のヴァルキュリア(『銀魂』の脚本チーム×山本靖貴(監督)ほかインタビュー)
・【特集】戦国武将アニメ(『戦国BASARA』『蒼天航路』レビューほか)
【特集】とらドラ!(全話解説とPSPのゲーム紹介)
・ゲゲゲの鬼太郎(三条陸さんインタビュー)
とらドラ全26話を力づくで一人レビューしたりしてます。編集長の阿部さんから「多根さん、仕事しすぎです!」と(ギャラの伝票を片手に)突っ込まれるハズですよね(笑)
このコメントしづらい時期に、インタビューに応じて頂き思いの丈を語ってもらえた三条陸さんには感謝の言葉もありません。第五期鬼太郎の続き、なんとか実現にこぎ着けないことにはやりきれませんよね……。
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STG特集(表紙がFCスターソルジャー!)のなかで「人類滅亡STGの系譜」(と書いて滅亡・ジ・アースbyタイトーと読む)を書いてます。この雑誌、何を書いても読者に完全スルーされてるアウェイ状態が悔しいんで、いつか振り向かせてやりたいと野望を育んでます。
こちら文芸&学芸書籍編集部(メルマガ)
こちらでは「名演説のメカニズム」を寄稿させてもらってます。オバマの演説を分析してビジネスマンの役に立つノウハウを抽出、というのはどこでもやってそうなので、あえて「オバマを真似してもしょーがないよん」と一ひねり。まぁひねりすぎて、編集の上林さんはタイトル付けに四苦八苦しておられたようです(笑)
以上、1週間以上もテキストを書かなかったリハビリもかねてご報告でした。幼稚園の頃から付き合い続けてきた鼻づまり、ええと病名でいうと鼻中隔湾曲症の手術にやっと踏み切って、しばらく入院していたという。まーGWとはいえ、1週間寝込んでも仕事にまったく差し支えなかったとは大丈夫かオレの先行き。